計画停電について、電力の需給カーブ(需要曲線)
を用いて簡単に説明をしてみたいと思います…
Q 需給カーブってなに?
電気は貯めておくことができないため、製造即消費といった形で
発電所で起こした電気は、直ちに消費者の元へ運ばれ使われます。
電力会社では、その時間の需要に応じて発電所の出力を調整しています。
上のグラフは、1日の需要の変化を表しています。
0時~ 6時 社会活動が行われていないため最も需要が少ない時間帯です。
6時~12時 日の出と共に活動が始まり一気に需要が伸びます。
12時ごろ お昼休みのため若干需要が落ち込みます。
12時~18時 最も社会活動が盛んな時間帯です。
18時~24時 就寝時間に向けて需要は徐々に減って行きます。
需給カーブは、季節や曜日・天気によって形や需要のピークが異なります。
東電の3月の需要のピークは、18時~19時ということなので
人々が会社から帰宅したり、自宅で電気を点けたりする時間がピークとなります。
※補足
原子力発電は一定の出力で発電され、火力発電は負荷(需要)に応じて
出力を調整する役割を担っています。

Q なぜ電気が足りないの?
東京電力管内の3月の需要ピークは、4100万kWということなので
上のグラフでいうと緑の線が需要のピーク値となります。
しかし、現在は地震の影響で、多くの原子力発電所や火力発電所が
停止した状態となっているため、稼働できる発電機をフルで使っても
3100万kWしか電気を起こすことが出来ません。それが赤の線です。
現在需要ピークに対して1000kWの電力が足りないという状態にあります。
※補足
これは、あくまで需要ピークに対しての話なので、需要が少ない深夜帯では
今まで通り普通に電気を使うことが出来ます。また、使用可能な発電機が
増えれば赤の線はその出力分上昇し、緑の線を越えることになれば、
計画停電は終了になると思われます。
(グラフは例なので実際の需給カーブとはことなります)

Q なぜ計画停電が必要なの?
上のグラフのように、今まで通りみんなが普通に電気を使って
需要が供給可能な3100kWを越えてしまった場合、供給力が不足するため
電気を送ることが出来なくなってしまいます。具体的には、周波数の低下や
発電機の脱落(停止)などの状況が発生し、最悪の場合50Hz系全ての
電気が停止してしまいます。(東日本が真っ暗になってしまいます…。)
電力会社は、それを防ぐために、計画的に各所を停電させることで、
需要が供給を上回らないように運用しています。
Q なぜ3/14は計画停電に踏み切らなかったか?
需要と供給の調整は、みなさんの電力使用量を見ながら実施されます。
この日は、多くの企業や鉄道が通常通り活動しなかったため、
例年並みに需要が伸びず、需要を絞らなくても十分供給可能であると
判断され日中の計画停電の実施を見送ったと思われます。
しかし、それでも点灯ピークには供給力が及ばないと判断し
やむなく計画停電を実施したと考えられます。
=3/16追記========================
Q 2003年の原子力発電所全台停止の時に計画停電にならなかったのはなぜ?
この話については、中の人間ではないので推測になるのですが…
答えは簡単で、「東電の原発しか停止しなかったから」が正解だと思います。
とりあえず、東電が持っている電源は 原子力1730万kW 火力3683万kW
水力852kWとなっています。ちなみに、水力に関しては、ピーク時の電力用の
揚水発電所が主な出力を占めています。(揚水発電所については下で解説)
電源は、基本的に需要の最大値に合わせて作られており、東電の需要の
最大値(ピーク需要)は真夏の日中で約6000万kWとなっています。
東電が持つ電源を、全部足すと約6000万kWとなるため大体ぴったりです。
では、本題に…
なぜ2003年の4月は、計画停電をしなかったのか?
まず4月という時期は、3月と比較して空調を使用する時間が短いため、
需要が現在より少なかったと考えられます。
さらに、当時は東海村の東海第二や東北電力の女川など50Hz系に
供給可能な原発が稼働していたこと、そして、管内の火力がほぼフルで
運転可能だったことが大きな要因だと推測されます。
今回の地震では、東電管内の火力設備はかなりのダメージを受けていますし、
(広野・常陸那珂・鹿島・大井。東扇島など)変電所も被害を受けています。
実際、柏崎刈羽も3台(330万kW)が定期点検中なので原子力も約500万kWしか
ありません…。もちろん東北の電源も、期待できませんので供給力は、
2003年時よりかなり厳しい状況にあると想像できます。
当時も計画停電の議論があったかもしれません…。
※揚水発電所について
揚水発電所には、需要ピークの供給(下図濃青の部分)の役割と
需要の平準化(下図緑の部分)という役割があります。

揚水発電所には上池と下池があり、発電時には水を上池から下池へ落とし、
需要が少ない時は、下池から上池へ水をポンプで汲み上げます。こうすることで、
昼のピーク需要で必要な電気を、水として貯めておくことが出来ます。
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この記事の目的は、計画停電という聞きなれない言葉に対して、
社会が混乱するのを少しでも和らげることが出来れば…
と思って、個人的な趣味で書いたものです。
質問があれば、その都度追記していきたいと思います。
計画停電しなくても、普通に電気が使える日が早く来るといいですね。
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